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「安いスーツ」か、「高い作業着」なのか

スーツの大型量販店が苦境にあえいでいるとの報道を目にします。

かつては、多くのサラリーマン達を顧客としていたはずの大型量販店。

どうして潮目が変わってしまったのでしょうか?

クールビズの普及、ファストファッションの台頭、オフィスのカジュアル化、職業や就業形態の多様化、若者の価値観の変化、長期にわたった不景気やデフレ・・。

様々な要因がすぐに思い浮かびますが、少し不思議かつ残念なのは、何十年もの間、日本のサラリーマンに仕事着を供給し続けてきた大型量販店が、今まで重ねてきた販売・接客の実績やノウハウが、どうしてその苦境を脱する力にならないのだろうか?ということです。

これはつまり、「このお店(当該量販店)が好きだからここでスーツを買ってきた」というお客さんが、必ずしも多くはなかった(売上実績の割には)ということではないのでしょうか?

大型量販店へは、「安いスーツ」を買いに来ていたお客さんよりも、実は「高い作業着(サラリーマン用の)」を買いにくることを「余儀なくされていた」お客さんのほうが多かったのかもしれません。

スーツなんか好きでもなんでもないけれど、スーツを着ないと社会人として認められないから仕方なく買っているんだ。」

もし、こういうお客さんが大型量販店の顧客の大半を占めていたとしたら・・。

3万円以下のスーツでも、サラリーマン仕様の「作業着」として、嫌々買っていたとしたら、それは痛い出費であったに相違ありませんし、着ていても少しも楽しくなかったのではないでしょうか。

かくいう私も20年ちょっと前まではそうでした。

ジーンズにスニーカーという恰好が大好きだったので、スーツを着るのは苦痛でしかありませんでしたし、知識もなかったので量販店にスーツを買いにいくこと自体が嫌で仕方ありませんでした。

社会人なのにスーツのことをあまり知らない、というのを悟られることは、あまり気分のいいことではありませんでしたので。

それなりに意を決して(ローテーションする仕事着が尽きてきて)量販店にスーツを買いに行ったときに、「スーツ買うのって面白いな、スーツのことをもっと知りたいな」と感じたかというと、残念ながらそうではありませんでした(あくまで当時の私の場合)。

つまり、スーツをたくさん売ってはいたし、安く揃えられるように実に様々な工夫がこらしてはあったのですが、スーツに対する苦手意識、軽い劣等感のようなものを払拭し、スーツに興味を持ち始めるような仕掛けはあまりなかったかな、と今になって思うのです。

それなら、当時の私のように「高い作業着(サラリーマン用の)」を買いに来たお客さんを、少しずつスーツ好きに転向させていくような接客、品揃え、広告宣伝、啓蒙活動、イメージ作り・・をしてくれていれば、お客さんの一部は、そのお店の、そしてスーツスタイルのファンになったのではないか?と思うのです。

現在、大型量販店のチラシを見ていて不思議に思うのは、極端に流行を意識したような商品がかなり目につくこと・・。

超ロングノーズのポインテッドトゥの靴やお尻がほとんど露出しているようなショート丈のスーツや、襟が二重になっていたり襟裏や袖裏が別柄の生地になっているシャツ等々です。

決してこれらの商品を否定したり批判するものではありませんが、本来、これらの商品は、ある程度、オーソドックスなスタイルを把握したうえで、外しとして楽しむ性質のものではないか、という気がするのです。

そうでないと、どれだけ買い物をしても、オーソドックスなスタイル、つまりスーツスタイルの基本というものに触れることができませんし、また、こうした流行色の強い商品は、えてして短命に終わりがちであることに鑑みると、いくらこうした商品を売っても、なかなかスーツスタイルそのもののファンは育ちにくいという副作用を伴うのは否めないと思うのです。

もちろん、靴なら「これくらいのつま先・捨て寸が普通」で、上着なら「お尻が大体かくれるかどうかくらいの着丈が基本」で、シャツは「クレリックシャツを除いて大抵はすべて共地でできていて、基本の襟型・カフの形状にはこんな種類があって、袖丈やカフの太さはこれくらいだと上着の袖に埋もれなくていい塩梅ですよ・・」などということを知ったうえで、あえてそうした商品を勧めたり、買ったりするのは何の問題もないのですけれど。

そういうことを教えてくれる販売員の方が、あの頃に私が行っていた量販店にいたらよかったのになぁ、と1995年頃の量販店に思いを馳せずにはいられません。

日本屈指のスーツの量販店は、日本屈指の「スーツスタイルの伝道師」であって欲しいし、それが「高い作業着(サラリーマン用の)」ではなく、「安いスーツ」を買いに来るお客さんを増やすことにもつながり、ひいてはスーツスタイルのファンを増やすことにもつながるのではないか、という気がしますし、そのポテンシャルを秘めていると信じたいところです。
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コメント

コメント(2)
No title
極端に流行追いすぎ…よくわかります。量販店=ダサいみたいなイメージが若い世代に植えつけられて、新しい顧客を取り込めないのも一因かと。ベーシックなスーツの着方、選び方を教える場は必要だと思うのですが。

tei-g

2018/05/30 07:14 URL 編集返信
No title
> tei-gさん
そうですよね、そういうイメージを払拭してからでないと、教える側として信頼してもらえないので、そこから考えないといけないのかも。

どうしても、お店の人=売らんかなという人 という前提がありますので、「何か売りつけられてしまうのでは」と構えてしまうのは避けがたいと思います。

目先の商売と関係なく、そうした知識を提供してくれるコンシェルジュのような方を、紳士服店横断的に雇用・配置するような試みがあると、紳士服に関しての土壌が豊かになっていくと思うのですが・・。

カッタウェイ

2018/05/30 19:56 URL 編集返信
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