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ゴーゴリの「外套」

若い頃は、少しも面白いと思わなかったロシア小説。チェーホフの「退屈な話」を読んで、「本当に退屈な話だ!」と思ったのを覚えているのですが、さっき何となく気が向いて、パラパラめくってみたら・・あれ?なんだか面白い・・。

読んでいるうちにロシア文学つながりで思い出したのが、ゴーゴリの外套です。残念ながら、自分の本を持っていないのですが、寒いし面倒なので本屋には行きたくありません。でも、今すぐ読みたい。

こんなとき、便利なのがご存知「青空文庫」です。著作権のなくなった作品を、ボランティアの方が入力し、webで無料公開してくれるというものらしいです。

パソコン読書は目が疲れるので、本当は紙に打ち出して読みたかったのですが、最近購入したE社のプリンターは目茶目茶トナーを食うのと、環境保護のために、パソコン上で読むことにしました。

http://www.aozora.gr.jp/index_pages/sakuhin_ka1.html (短いので、すぐ読めます。)

ロシアの、下っ端役人が、無理して外套を誂えるという話です。他人事と思えないというか、まるで自分のことを書かれているようです。

のっけから、お役所の風刺で始まるこの作品、古今東西、お役所や役人の性質は似たり寄ったり・・とは申しませんが、現代の目で見ても楽しめます。というか、なかなか痛いところをついています。

その下っ端役人の主人公は、文書を写す仕事以外、何の興味も持たない冴えない中年男性。

長年酷使してきた外套(ボロボロのつぎ当てだらけで、職場で「半纏(はんてん)」と嘲笑されている。)を補修に出そうとして、仕立て屋に「だって、補布の当てようがないじゃありませんか(中略)これじゃあラシャとは名ばかりで、風でも吹けば、ばらばらに飛んじゃいまさあ。」と断られ、「手前が一つ新しいのを、とびきり立派に仕立てて差しあげましょう。」と、否応なく新しい外套を仕立てることになってしまう。

ところが、外套を仕立てるという目的ができたとたん、装いなど全く気にしなかった彼が、急に生き生きとし始め、仕事中に仕立てのことを考えて失敗しそうになったり、仕立て屋のところに相談に通ったりするようになり、「やがては外套のできあがる時が来るのだと考えて、いつも満足して家へ帰る」ようにまでなってしまう。

折りしも、寒波襲来時の出勤前という絶妙のタイミングで納品された新しい外套!この納品のシーンは実に素晴らしいです。

仕立て屋の「古い馴染であればこそ、こんなに安く引受けたのであるが、これがもしネフスキー通りあたりだったら、仕立代だけでも七十五ルーブルはふんだくられるところ」だと吹聴するくだり、洋服を仕立てたことのある方なら、ニヤリとしてしまうのではないでしょうか。


英国服好きの方は、ネフスキー通りをサヴィルロゥ界隈と置き換えて読んで下さい。

仕立て屋が、納品後に注文主の後ろ姿を見送った後、先回りして、今度は正面から自分の仕立てた外套を見るあたり、きっと彼は(飲んだくれてはいますが)一流のビスポーク・テイラーだったのでしょう。

主人公が帰宅後、外套を脱いで、裏地や生地に見惚れてから壁にかけ、わざわざ古い「半纏」を持ち出してきてながめる(噴き出してしまう)場面も、なんだか感情移入できます。


どんな趣味(主人公の場合、趣味で仕立てた訳ではないけど)でも、ハマりかけが一番楽しいのかもしれません。

ところで、せっかく仕立てたこの外套、その晩のうちに追剥ぎに奪い去られてしまいます。そうそう、これは別に洋服を仕立てる楽しさをしたためた作品ではないのでした。

その後の主人公の悲惨な末路については、万一、この作品を未読の方が「よっしゃ、今から読んでみるか!」と思わないとも限らないので、書かないことにします。

それにしても、私の外套(チェスターフィールドコート)はいつ出来上がるのだろう・・。

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コメント

コメント(2)
No title
かわいそうです。(妄想入っている)悲惨なラストなら読まないようにします。

chargeup2003

2005/12/20 21:24 URL 編集返信
No title
悲惨と言えば悲惨なのですが、一応復讐?(といえるかどうか)するのです。その過程で善良な市民に大変な迷惑を掛けますが・・。日本では追剥ぎはあまり聞きませんが、この時期、居酒屋で靴マニアが靴を間違えられて泣きわめく事件が頻々と起こるようです。

カッタウェイ

2005/12/20 21:38 URL 編集返信
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