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忘れ物を取りに

村上春樹の「ノルウェイの森」を読みました。
 
3週間前にたまたま借りて読んだ短編小説の「蛍」と序盤はほとんど同じで驚いたのですが、お蔭でとても感情移入が容易で、あっという間に読み終えることができました。
 
作品中に「死後30年以上経った作家の作品しか読まない」という人物が出てきますが、私にも同じような読書傾向があります。
 
そのおかげで、現在活躍している作家にはほとんど無知なのですが、最近、同じ時代を生きているというのに、これはとても勿体ないことではないかと思うようになってきたのです。
 
そうしたわけで、図書館でふと「村上春樹でも読んでみるか」と手にしたのが「蛍」であり、続けて借りたのが、この「ノルウェイの森」だった、というわけです。
 
読了後、少しだけ、感想を残しておきたくなり、ブログに書いてみることにしました。
 
【読むべき時期】
大学生時代に読んでおきたかったな、というのが第一の感想です。
 
ただ、大学生のときに読んでも分からなかった箇所は多々あるだろうな、とも感じました。
 
【ブーメラン時代】
私は自分が十代後半から二十代はじめの頃を振り返って、「誰かと接していても、結局、相手を通して自分自身を見ていたのだ」と思うことがあるのですが、この作品では、それを「ブーメランのように自分自身の手もとに返ってくる年代」と表現しています。
 
私の友人は、この年代の人付き合いのことを「アイデンティティ確立の時期で、それはまさに戦いだ」と表現していました。働きもせず、ろくに勉強もせず(あくまで私の場合)、今振り返ると楽勝の時代だったような気さえしてきますが、実際はそれなりに難儀な時期だったということでしょう。
 
【忘れ物を取りに】
10代~20代前半くらいまでのうちに、必ず味わっておかなければならない、恥ずかしいことや屈辱的なこと、その他もろもろの負の経験、というようなものがあるように思います。
 
何らかの事情で、これを経験しないまま大人になってしまうと、後からきっとそれを探しに戻らなければならないような気がするのです。
 
私はこれを「忘れ物を取りに行く」と言っています。
 
そして、忘れ物は忘れてから時間が経てば経つほど、取りに戻るのが大変であるように思われるのです。
 
私自身を振り返っても、20代前半は忘れ物を取りにいくために色々と回り道をしたように思います。
 
その後は、「もう忘れ物はない」というつもりで生きてきたのですが、忘れているから忘れ物なのであって、まだ何かを忘れたままにしていないとも限りません。今から取りに戻るのはちょっと大変そうです。
 
この作品では、登場人物の直子が、多分同じようなもののことを
 
「世の中に借りを返さなくちゃならなかったからよ」
 
と表現しています。
 
「成長の辛さのようなものをね」
 
「支払うべきときに代価を支払わなかったから、そのつけが今回ってきているのよ」
と。
 
つけに利子が課されるように、忘れ物を取りにいくのは年々大変になっていくことでしょう。
 
学生時代、勉強をするのも勿論大切なことなのでしょうが、「つけを貯めない」よう「忘れ物をし過ぎない」よう、注意をしてくれる人がいると、後年、苦労をせずに済む人が増えるかもしれません。
 
ときどき若者が羨ましく思えることがあるのですが、彼らはあれでとても大変だったんだ、ということを、この作品のおかげで久しぶりに思い出すことができました。
 
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コメント

コメント(4)
No title
大学時代に読みましたが、確かによくわからない箇所が多々ありましたね。今ならわかるかというと、なかなかそうもいきませんが。
前に自分のブログに書きましたが、身近な人のお葬式で遺骨を見たことがありません。年々恐ろしくなるばかりで、いつかは忘れ物を取りに行かなければならないでしょう。

chargeup2003

2014/04/15 19:09 URL 編集返信
No title
chargeupさん、大学時代にお読みになったとは羨ましいです。

ブーメラン時代の只中に読むことができたらどんな影響を受けられたかと、少し勿体ない気がしていたのですが、当時の自分では過激な描写に気を取られるばかりで、深く味わうことはできなかったかもしれないな、と思い直しているところです。

遺骨ですか・・。私は子供の頃に一度見たきりです。色々考えると、私にもまだまだ忘れ物はありそうです。

カッタウェイ

2014/04/15 21:09 URL 編集返信
No title
僕は大学二年生前の春休み、20歳時に初めてこの作品を読みまして、以来、村上春樹にどっぷり浸かった大学時代を過ごしました。仰いますとおり、大学時にこの作品と出会って、本当に良かったと思います。
この作品の冒頭に、「記憶が鮮明だった若い頃、直子について書いてみようと思ったが、あまりにもくっきりしすぎていてどこから書けば良いのか分からなかった。記憶が不完全な今だから書ける」、そう言った具合の事が書かれていますが、この箇所、初めて読んだ時は「そう言うものなのかなあ?」と思いましたが、30歳を過ぎた頃になって、「そう言うものなのだ」と言うのが分かりました……。

dai*uk*_yam**ita

2014/04/30 10:00 URL 編集返信
No title
山下さん、主人公(回想の)と同年代でこの本を読まれたのは羨ましい限りです。靴のBBSでのこの本の紹介もインパクトがあり覚えています。あのBBSの影響で「ゆらめく炎」や「魚雷艇学生」は読んだのに、この本を読み損ねたのは失敗でした。

冒頭の箇所、印象深かったのですが、すぐに人の顔を忘れてしまう(特に綺麗な人は)私は、最初から最後まで記憶がいい加減なので、このくだりは理解できないまま終わってしまいそうです。

カッタウェイ

2014/04/30 21:45 URL 編集返信
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