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「アイルランド/アランセーターの伝説」を読んで

アランセーターを知る上では必読の書であると聞いていたこの本を、ようやく読むことができました。

「アイルランド/アランセーターの伝説 著者:野沢弥市朗(繊研新聞社)」


アランセーターといえば真っ先に名前があがるであろう販売店、セヴィルロゥ倶楽部の店主が書かれた本です。

私が入手したゴルウェイ・ベイ・プロダクツのアランセーターも、前オーナーはこちらのお店で購入されたそうですので、こちらのお店がなければ、私がこのセーターを着ることもかなわなかったに違いありません。

残念ながら、今では絶版のようで、お店でデータCDを頒布されてはいるものの、紙媒体のものを入手するのは困難のため(古本も手が出しにくい価格)、図書館から借りてくるのが精いっぱいのところでした。

内容は期待どおり、豊富な実体験や聞き取りに基づく素晴らしいもので、特に私の印象に残ったのは、クレオというお店の当主キティ・ジョイスという方の「何をもって本物のアランセーターと呼ぶのでしょうか?」という問いです。

あえて本物、というなら、この方は「1940年代当時に編まれていたアランセーターのこと」だと言います。

アランセーターの産業化が進む前のもの、ということになるのでしょうか。脱脂も洗浄もあまりせず、サイズも全く企画化されていないということで、最初の本格輸出は大失敗したと本書に書かれています。

「本物」に拘り続けると、それは時代をさかのぼって、日常着には不向きな、あるいは過ぎ去りし過去を物語る「特殊衣料」に行きつく・・。

1987年頃、「本物のMA-1」と呼ばれ絶大な人気を博したアルファ社のMA-1が、実はアメリカ空軍ではとっくに支給されておらず(MA-1の飛行服そのものが)、単なるサプライヤーの一つが作製した市販品に過ぎないと知り、「本物」を探し続けたときにことを思い出しました。

「本物の飛行服」としてのMA-1は、ライニングがウールパイルで非常に重く、実際に飛行服として着用されたものであるため、透明のネームタグ入れや中に入れるネームタグ、階級章などが取り付けられたものものしいものでした。

素材も作りも大変素晴らしいものでしたが、当然のことながら「戦争の匂いが染みついた」服であり(実際に戦闘に参加したかどうかは分かりません)、私はその重苦しい雰囲気に打ちのめされそうになってしまったのでした。

本物探しも、ほどほどのところにしておくのが、洋服を趣味として楽しむコツであるのかもしれません。

アランセーターについては、手元にあるゴルウェイ社のものが私にとっては十分「本物」ですし、何より、着ていてとても暖かい気分になれるのです。

人の手が人を癒すように、人の手でゆっくりと作られたものも、また人を癒すのではないか、という気がしてくるのです。

このようなアランセーターが、現在ますます入手困難となっているのは、なんとも残念なことです。

メアリー・オフラハティさんの作品を着てみたいのですが、ご本人は亡くなられてしまい、島にある在庫も僅かでしょうから、これはかなわない夢になりそうです。

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コメント

コメント(6)
No title
詳しい情報ありがとうございます。

実際に私達が着るための、
実用的アランセーターがあると良いなあ。

と感じました。

脱脂されていないウールで、
手編みで丹念に編まれたものがあると良いなあ。

と。

ジャーミンストリートでビスポークで作った本物の英国靴でなくても、
日本人に合う、自分の足に合う木型で、
正しくグッドイヤーで作られたオックスフォードなら、
普通に通勤に履いて、
何ら恥じる事がない様に。

真の本物でなくても良いから、
元々の本物が持っていた価値を、
私達の今に反映させた様な、
本格的なものがあると良いなあ。

なんて思いました。


なかなか巡り会えませんけれど。

London Brahmin

2015/12/23 16:39 URL 編集返信
No title
きゃんでぃ小海老爺様、ありがとうございます。

仰ること、よく分ります。本場本物への憧憬は経ち難いものがありますが、それはそれとして、「本物が持っていた価値を、私達の今に反映させた様な、本格的なもの」と出会えるとどんなに良いか、と私も思います。

セーターは、スーツや靴と違って、アマチュアの腕利きの方も沢山おられるでしょうから、他のアイテムより可能性があるような気がしています。

カッタウェイ

2015/12/23 17:27 URL 編集返信
No title
はじめまして。
いつかアランセーターの事を読んでいた時を思い出し、懐かしく思いながらコメントさせて頂きます。
以前、アランセーターの事を詳しく書かれたサイトさんがあり、そこを読んでいたのですが、こちらを見て、戦時中のお話もあるんだ、と思いました。

メアリーさんの作品は日本でも以前手に入ったのですが、対面販売にこだわっていた作者さんの気持ちを汲んで停止してしまったんですよね。自分も小物だけ購入させて頂いたのですが、なんだか手に取るとほんわかするんですよね。
古着のアランセーターを手に入れたとありましたが、大事になさってください。ドキドキしますよね!こういうのが本物だと思います。

なんだか懐かしい気分になりました。ありがとうございます。

きぃ

2016/10/29 01:37 URL 編集返信
No title
> きぃさん
初めまして。コメントありがとうございます。

メアリーさんのセーター、国内の古着屋さんで安価に売られていた痕跡を見たことがあり、「アラン諸島に行ってまで買い求めたはずのセーターをなぜ?」と疑問に思ったことがあるのですが、国内販売していた時期があったのですね。

それをメアリーさんのご意向で停止。疑問が解消してすっきりしました。御礼申し上げます。

古着のアランセーターはウェットクリーニングを経て、ようやく自分の持ち物になってきた気がします。着ていると暖かい(保温力も高いですし)気持ちになるというか、大げさな言い方をすれば、なんだか「守られている」ような気がするのです。

これは別に魔除けの力があるというわけではなく、手仕事の温もりのようなものが、自分を安定した気持ちにさせてくれる、というような性質のものだと思いますが、そうした気持ちにさせてくれる服はあまり多くなく、かけがえのない一着になりつつあります。

カッタウェイ

2016/10/29 09:30 URL 編集返信
No title
返信ありがとうございます。
なんと、古着屋で…!!もったいない。
日本国内販売と言っても、数点のみだったのでそれでも貴重だったと思うのですが…!(そして今思えばすっごい高価なわけではなく…)

これが漁師さんの仕事着だったそうで、保温力があるのはお墨付きだと思います♪
またクリーニングされた画像、とってもきれいですね!
そうですね!手仕事の温もりってありますよね。しっかり編まれた網目も誰かの手で作られたのだと思うと不思議ですよね。
今ではアイルランドから直送してくれる業者さんもありますが(恐らくほぼ機械編みでしょうが、アイルランド製です)これを見ていても面白いです。
網目の意味とかちょっとした歴史とかあるので、飼わなくても見ていて楽しいです。
ご存知かもしれませんが、どうぞ
ttp://www.aransweatermarket.com/

きぃ

2016/10/29 13:02 URL 編集返信
No title
> きぃさん
貴重な情報をお教えいただきありがとうございます。

古着屋で売却済だったメアリーさんのセーターは確か紺系でした。購入した方が大事にしておられることを願うばかりです。

お教えいただいた情報、素材の違いや作風など、驚くことばかりでした。じっくり読ませていただきます。ありがとうございます。

カッタウェイ

2016/10/29 16:19 URL 編集返信
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