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「異邦人」の災難

カミュの「異邦人(窪田啓作訳:新潮文庫版)」をパラパラ読み返してみました。

【あらすじ】
主人公が、母親が死去した日の翌日に海へ泳ぎに行き、そこで偶然再会した元タイピストの女性と同衾したあげく、不良友人の痴話喧嘩に巻き込まれて、アラビア人の男を射殺してしまい、逮捕された後、裁判長から動機を聞かれ、「それは太陽のせいだ」と答えて死刑を宣告される・・。


【感想など】
今回再読して面白かったのは、本編よりむしろ解説のほうで、カミュが「異邦人」の英訳に寄せたという自序のくだりです。カミュはこの中で、

「・・・・・・母親の葬儀で涙を流さない人間は、すべてこの社会で死刑を宣告されるおそれがある、という意味は、お芝居をしないと、彼が暮らす社会では、異邦人として扱われるよりほかはないということである。」(カミュ:異邦人(窪田啓作訳:新潮文庫版)あとがきより)

と述べています。また、

「嘘をつくという意味は、無いことをいうだけでなく、あること以上のことをいったり、感じること以上のことをいったりすることだ。しかし、生活を混乱させないために、われわれは毎日、嘘をつく。・・・(以下略)」

とまで言っています。

得心がいかない助言に感服したふりをしたり、飲み会ではしゃいだ声を出そうと努力するのも「嘘」だとすると、私も日々、へたくそな嘘を重ねてなんとか生き延びているだけの身の上です。

「異邦人」の主人公が、この「嘘」をつくことを拒否したがために断頭台へ送られたことを考えると(そもそもの原因は他人様をピストルで撃ったからですが)、「嘘」をつくことを拒んでいる人や「嘘」をつきたくてもつけない人が、その理由の如何を問わず、十把一絡げに「コミュニケーションスキル不足」として糾弾されがちである実社会にも、主人公を断罪した「陪審員」や「検事」と同様の心理が働いていることに気付かされます。

世のため人のために。あるいは小さな地域社会を守るために。小さな無意識の「嘘」をつくという犠牲を払おうとしない「異邦人」に対する容赦ない糾弾や断罪。

これは裁く側の想像力の欠如なのかもしれませんし、それを分かっていながら執り行われる「コミュニティを守るための見せしめ」であるのかもしれません。


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コメント

コメント(2)
No title
私も解説の「母親の葬儀で涙を流さない人間は…」のところ、印象に残っています。私もその場の雰囲気に「合わせる」ということが苦手なタイプなので、異邦人と思われていることがあると思います(苦笑)

eveningstar

2016/05/17 14:23 URL 編集返信
No title
イブさんも新潮文庫版をご覧になったのでしたね。読書ブログを読み返させていただきました。

周囲に合わせる能力。羨ましいけれど異邦人のままでいいや、と思わないでもありません。宇宙人だと思われなければいいかな・・と。

カッタウェイ

2016/05/17 19:53 URL 編集返信
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